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香りを入口に、人と土地を巡らせる。奈良・室生で開催された「香りで巡る、室生。」体験レポート(奈良県)

いいもの宇陀なら

「香り」を入口に室生を巡る、新しい地域体験

2026年(令和8年)6月18日から28日までの11日間、奈良県宇陀市室生エリアで「香りで巡る、室生。 室生アートカフェラリー × 宇陀ジンギャラリー」が開催されました。 今回の企画は、室生に点在するカフェや寺社、地域スポットを巡りながら、香りや植物を通じて土地の魅力を楽しむ回遊型イベントです。

舞台となった室生は、歴史ある寺社や豊かな自然、個性あふれるカフェなど、さまざまな魅力が点在する地域です。地域にある魅力をどのように知ってもらい、実際に足を運んでもらうかということは、多くの地域が抱える課題でもあります。

そこで今回注目したのが「香り」という切り口でした。

宇陀に自生する植物の香り、森や里山の空気、地域で育まれてきた文化。目に見える観光資源だけではなく、その土地でしか感じることのできない感覚的な魅力を入口に、室生という地域全体を巡ってもらうことを目指しました。

会場の一つである宇陀ジンギャラリー(室生アートハウス)には、期間中には約150名が来場。

そのうち100名以上が宇陀市外から訪れ、大阪、京都、兵庫、和歌山、滋賀、三重、岐阜、東京など、県内外から多くの人が室生を訪れました。 当初、「宇陀ジンギャラリー」という名称から、クラフトジンや蒸留酒に関心を持つ人が中心になることも想定されていました。しかし実際には、

「このイベントがなければ来なかった」
「本当に来てよかった」
「もっと室生を知りたい」
という声が多く寄せられました。

訪れるきっかけは「香り」だったとしても、そこで出会ったのは室生の風景、食、人、文化、そして地域そのものでした。 今回の11日間は、ひとつのイベントを楽しむだけではなく、訪れた人が歩き、発見し、「また来たい」と思える地域との出会いを生み出す時間となりました。

初めて訪れる理由をつくった「香りで巡る、室生。」

地域への旅行を考えたとき、「行ってみたい」と思うきっかけは人によってさまざまです。 美しい景色に惹かれる人もいれば、その土地ならではの食を楽しみに訪れる人、歴史や文化に触れることを目的にする人もいます。 近年では、観光名所を見るだけではなく、その土地でしか味わえない体験や、地域の日常に触れることを目的とした旅も注目されています。

今回、室生を訪れるきっかけになったのは「香り」でした。 「香りで巡る、室生。」では、宇陀市に自生する植物を蒸留し、その香りを楽しむ展示や、宇陀ジンをテーマにした空間づくりを通して、地域に根付く自然や文化の魅力を発信しました。

グラスから広がる香り。その香りを生み出した植物。植物が育つ室生の森や里山。 そして、そこに暮らす人々や受け継がれてきた文化。 一つの香りを入口に、興味の対象は少しずつ地域全体へ広がっていきました。

新しい発見が、次の行動につながっていきました。実際に来場者からは、「香りで巡る、室生。」という言葉や世界観に惹かれて訪れたという声も多く聞かれました。 イベントを目的に訪れた人が、いつの間にか室生という土地そのものに興味を持つ。それは、地域に新しい来訪理由を生み出すうえで、「香り」という感覚的な入り口が持つ可能性を示した出来事でした。

室生を初めて訪れた人が感じた、地域の魅力

今回のイベントをきっかけに、初めて室生を訪れた人も数多くいました。 その中には、もともと室生を訪れる予定がなかった人や、名前は知っていても具体的な魅力を知らなかった人もいました。

「香りで巡る、室生。」という企画との出会いが、新たな旅のきっかけとなりました。

大阪在住の20代女性は、Instagramで今回の企画を知りました。 美しいキービジュアルや「香りで巡る、室生。」という言葉に惹かれ、どうしても訪れてみたいという思いから、電車とバスを乗り継ぎ、初めて室生を訪れました。 訪問当日は室生寺や橋本屋を巡り、さらに別の日には徒歩で宇陀ジンギャラリー、龍鎮神社、海神社なども訪問。 一度きりのイベント参加ではなく、室生という地域そのものに興味を持ち、時間をかけてまちを巡る体験へとつながりました。

後日寄せられた感想には、 「本当に来てよかった」
「もっと室生を知りたい」
「次は家族や友人を連れて来たい」
という言葉がありました。

また、大阪在住の30代女性フォトグラファーも、今回の企画をきっかけに初めて室生を訪問しました。 自然の風景を楽しみ、カフェで地域の味に触れ、そこで暮らす人との交流を通じて、室生の日常に触れる時間を過ごしました。

観光地として有名な場所を訪れるだけではなく、まだ知られていない地域の魅力と出会う。 そして、一度訪れた人が「また訪れたい」と感じる。今回のイベントが生み出した大きな価値は、来場者数だけでは測れません。室生という土地を知る人、好きになる人、そして未来の再訪者を生み出したこと。 それこそが、地域にとって大きな意味を持つ成果となりました。

室生を歩くことで見えてくる、旅の楽しみ

近鉄室生口大野駅。 電車を降り、改札を抜けると、室生方面へ向かうバス停があります。 駅周辺の静かな空気、山々に囲まれた景色、ゆっくりと流れる時間。 都会の駅とは違う、少し立ち止まりたくなるような雰囲気があります。 以前訪れた際、バスを待つ若者と地域のおじいさんが楽しそうに会話をしている場面に出会いました。

「どこから来たの?」
「室生なら、あそこもいいよ」
そんな何気ないやり取りだったのかもしれません。 旅先で交わす短い会話は、観光スポットを巡るだけでは得られない、その土地ならではの記憶になります。

今回はその光景を見ることはできませんでしたが、室生には、訪れた人と地域の人との距離が自然と近づくような空気があることを改めて感じました。

バスの車窓から眺める山の景色。 目的地へ向かう途中で見つける小さな風景。 予定していなかった場所に立ち寄る余裕。 効率よく多くの場所を巡る旅も魅力ですが、室生では少しゆっくりと時間を使うことで、その土地の本当の魅力に出会えるような気がします。

目的地へ向かう時間も、旅の一部になる。 それが、公共交通機関で巡る室生ならではの楽しみなのかもしれません。

カフェやギャラリーを巡りながら、室生の日常に触れる

今回立ち寄ったのは、「香りで巡る、室生。」のMAPにも掲載された「Meli-Melo」。

店内には多くの人が訪れ、本場フランス仕込みのガレットを楽しんでいました。 香ばしく焼き上げられた生地、新鮮な野菜、卵のまろやかさ。 素材の味を楽しむ料理と、フランス人のご主人、日本人の奥様が作り出す温かな雰囲気は、まるで海外の小さな町を旅しているような時間でした。

その後訪れた「宇陀ジンギャラリー」では、宇陀の植物から生まれた芳香蒸留水を使ったノンアルコールジンカクテルを体験。 グラスから広がる香りは、まるで森の中を歩いているような爽やかさ。 展示を眺めながら、次はあそこへ行ってみたいという新しい興味が自然と生まれていきました。 一つの出会いが、次の目的地を生む。それが、室生を巡る旅の魅力です。

目的地だけではない、地域を巡る旅へ

旅の魅力は、目的地に到着した瞬間だけではありません。

駅から歩く時間。
車窓から見る景色。
地域の人との会話。
偶然出会った店や文化。
そうした一つひとつが、その土地ならではの思い出になります。

「香りで巡る、室生。」が生み出したのは、単なるイベントではありません。 香りをきっかけに、初めて室生を訪れた人が地域を歩き、知り、好きになる。 そして「また訪れたい」と思う。そんな新しい地域との出会い方でした。

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