挽きたて、打ち立て、茹でたての「三たて」が味わえる「くにもと」のそば
蕎麦処くにもとの打ちたてそば
みなさんは美味しいそばのセオリーをご存じだろうか?食べる前にテーブルで「おいしくなぁれ〜」のような秋葉原のメイドさんに魔法をかけてもらう必要はなく、実はその製法こそが、そばの魔法だったのだ。
魔法その1.『挽きたて』。そばの実を石臼で挽いてそば粉にした状態からの時間勝負!当然、挽きたてが一番おいしいといわれている。
魔法その2.『打ち立て』。挽いたそば粉をすばやく打って、みなさんお馴染みの形状のおそばの状態にすること。伸ばし棒の扱いは熟練の技が必要だそう!こちらも当然、打ってから時間が経過しすぎると硬くなって食感が悪くなってしまうので、なる早で、次の「たて」に移る必要がある。
魔法その3.『茹でたて』。冷そばでも温そばでも、まずは茹でなきゃ始まらない!家系ラーメンのようなバリカタなんて状態はないので、ベストな状態に茹で上げるのも匠の仕事のひとつ。そばは湯から取り上げた瞬間から伸びはじめるから、まさに時間との勝負!
つまり、特に大事なのは、その2と3、打った麺をどれだけ早く茹で始めるかが、勝負になるってわけ。茹で上がりの食感、鼻腔に感じる香りが命ってことです。少し暑い日や夏場なんかは、冷で盛りそば、ざるそば風が食べたくなるけど、その場合は、茹で上がりにキュッと冷水で締めるのが重要なんですね。
匠のそば打ち主婦職人たちが繰り広げる朝の「くにもと」のそば打ちタイム
毎朝開店前の9時にそば打ちをおこなっている
さて、その「三たて」の魔法がかかった極上のそば、意外と繁華街のチェーン店なんかでは食べられないというから、本格的なそば専門店を探さなければいけない。実は筆者はそのひとつを紹介可能なので、ぜひとも覚えておいていただきたいのが、『道の駅うつのみやろまんちっく村』の「そば処 くにもと」がまさに「三たて」のそばが味わえるそば屋なのだ。
「くにもと」では、その職人技を極めた主婦の打ち手たちが毎朝9時に、その日の宇都宮の、いや、ろまんちっく村という絞ったエリアにおける気温と、そして湿度を毎日のようにチェックして、加水量(水の量)を細かく調整してそばを打っている。本社の広報担当も知らなかったというこのこだわりを知ってしまうと、食べたくなってきませんか?
ひとことに、手打ちそばといってもその道は果てしなく険しく遠い!例えば、湿度が高い日はそば粉が余計な水分を含むため、水の量を減らす必要があり、逆に乾燥している日は水を多めにする、それは季節によっても、その日の室温によっても変化が生じる。そんな微細な温度変化を肌で感じることができるのが、匠の打ち手たち。結果、その日のベストコンディションともいえる、最高のそばができあがるのだ。
さらに、そばを打っている間や練っている間に、温度が変化したり風にさらされたりするとそばの水分が蒸発し、仕上がりに影響を及ぼすこともある。また、湿度が低いと蒸発量が大きくなるため、最初から少し多めに水を入れることもあったりと、もはやその加減は熟練の技というわけだ。
ろまんちっく村の匠の打ち手の正体は、地元「そば打ち会」のみなさまだった
本格的な蕎麦を食べるなら、くにもとへ
そば職人になるには、専門のスクールに通ったり、誰かの弟子になったりするものと思っていたのだが、筆者の母親の友達も最近、老後の趣味として「そば打ちを始めたのよ」なんてフラワーアレンジメント教室に通いはじめたぐらいのノリでいうので、調べてみたところ、全国のそば愛好家やそば好きが集まって、そば打ちの技術を学びながら交流できる、「そば打ち会」なるものが各所に点在しているらしい。
そば打ちの基本技術である、水回し・こね・延ばし・切りなどの工程を元職人や現役の方々に教えてもらいながら切磋琢磨しつつ学べてしまうのだそうだ。この「そば打ち会」は思った以上に本格的で、段位を取り入れているところもある。
「そば処 くにもと」で毎朝こだわりのそばを打つ匠の主婦職人のみなさんはどうやらその「そば打ち会」に所属しているか、出身者らしいのだ。どうりで取材中に話しながらでも延ばしや切りが堂に入っていたわけで、納得がいってしまった。聞くところによると、『道の駅うつのみやろまんちっく村』が開園した当初から、その腕を振るっている方もいるらしい。
次に訪れる機会があれば、とは書かない。次のお休みに訪れてほしいのだが、そこでぜひ「くにもと」の手打ちそばをじっくり観察してほしい。よく見ると、微妙に太さが不揃いになっていたりするので、機械ではないことがわかるはずだ。そして、その不揃いこそが、つゆや汁によくなじみ、味のノリが良くなる秘訣だということにも気づくと思う。
ちなみに、手打ちそばを作っている場所は、「くにもと」内、食器返却口の横のガラスで覆われたエリアだ。かつては、お客様にもライブキッチンならぬライブ手打ちを見せていたのかもしれない。