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インタビュー・ストーリー(People / Story)

450年の時間が育てた一匙。森野吉野葛本舗・11代目当主が語る「葛」と風土のものづくり(株式会社森野吉野葛本舗)

いいもの宇陀なら
森野吉野葛本舗が営む実店舗「茶房 葛味庵」

450年続く葛づくりは、「土地」と「水」から始まった

「株式会社森野吉野葛本舗」森野藤助氏

「株式会社森野吉野葛本舗」森野藤助氏

奈良県宇陀市。冬には近畿でも指折りの寒さになるこの地で、450年にわたり葛粉づくりを続けてきたのが、森野吉野葛本舗だ。
話を聞いたのは、11代目当主・森野藤助氏。代々受け継がれてきた家業と、その背景にある思想について、穏やかな語り口で教えてくれた。

「もともとは吉野の地ではじめ、のちに宇陀へ移り住みました。寒さが厳しく、水が豊富で、葛づくりにとても適した土地だったからです」

宇陀は、高野山や信楽と並び、近畿のなかでも特に冷え込む地域。その寒冷な気候と清らかな水が、手間のかかる葛粉づくりを支えてきた。

「葛粉は水を大量に使い、時間をかけて仕上げる仕事です。自然環境が整っていなければ成り立たなかったと思います」


大切なのは「水」と「人の心」。機械では代替できない仕事

葛づくりに大事なのは水と、伝統的製法

葛づくりに大事なのは水と、伝統的製法

森野氏が特に強調するのは、水の質と、つくり手の姿勢だ。

「葛づくりは手作業が多く、丁寧さがそのまま品質に出ます。仕事への向き合い方や、人としての心が、最終的な味に影響すると思っています」

効率化が求められる現代においても、森野吉野葛本舗は450年前の製法を守り続けている。

「古いからこそ価値がある。時代と逆行しているように見えるかもしれませんが、そこに私たちの存在意義があると思っています」


11代目「藤助」の名に込められた、もうひとつの歴史

森野家「藤助」襲名の歴史を語る現当主

森野家「藤助」襲名の歴史を語る現当主

現在の当主が名乗る「藤助」は、11代前から受け継がれてきた名だ。その背景には、葛づくりだけでなく、日本の医薬史とも関わる物語がある。

江戸中期、八代将軍・徳川吉宗による享保の改革のなかで、国産薬草の栽培が奨励された。当時、山に入り薬草を採取していた森野家の活動が幕府の目に留まり、支援を受けることに。
それが、現在も続く「森野薬草園」の始まりだ。

「もともとは苗字もない農民でしたが、苗字と帯刀、そして“藤助”の名を賜りました。葛づくり自体はもっと古いのですが、この出来事を起点に、代数を数えています」


吉野葛の真髄、「吉野さらし」という時間の仕事

吉野の本葛

吉野の本葛

吉野葛の品質を語るうえで欠かせないのが、「吉野さらし」と呼ばれる工程だ。
原料となる葛根は、冬に掘り起こされ、砕かれ、何度も水にさらされる。

「最初は泥のような状態です。それを地下水とともに混ぜ、沈殿させ、不純物を捨て、また水を替える。この作業を10回以上、3週間ほど繰り返します」

例えるなら、お米を研ぐ作業。ただし、葛は沈殿するのに2日もかかる。
その気の遠くなるような工程が、雑味のない、なめらかな葛粉を生み出す。


縁の下の力持ち。それが葛の魅力

料理に利用するお客様も増えたという

料理に利用するお客様も増えたという

葛と聞くと、葛餅や葛切りを思い浮かべる人が多いだろう。しかし森野氏は、「葛の本当の魅力は、目立たないところにある」と話す。

「とろみづけに片栗粉の代わりに使うと、粒子が細かいので料理が格段になめらかになります。主役ではなく、下支えをする存在ですね」

外国人からは、「透明ではなく、障子やすりガラスのような質感が日本的だ」と評されることもあるという。


伝統を守りながら、入口を変える挑戦

新しい発想も積極的に取り入れ、葛文化を広める

新しい発想も積極的に取り入れ、葛文化を広める

製造の軸は変えずに、使い方や伝え方は柔軟に。
森野吉野葛本舗では、洋菓子や洋食への応用、コーヒー風味の葛菓子など、新しい提案にも積極的だ。

「入口を変えて、まず触れてもらうことが大切。その先に、葛本来の世界があると思っています」

実際、バリスタと組んだ「コーヒー葛饅頭」は大阪でも大きな反響を呼んだ。

若い世代には葛湯、海外には抹茶との組み合わせ。
文化や味覚の違いを理解しながら、伝え方を模索している。

「口に入れてもらえれば、自信はあります。その“一口”までの工夫が、今の課題ですね」


450年続く理由は、変えないことと、変えること

宇陀の地だからこそできる、本葛をこれからも作り続ける

宇陀の地だからこそできる、本葛をこれからも作り続ける

効率よりも誠実さ。派手さよりも積み重ね。
森野藤助氏の言葉からは、長く続く仕事に共通する哲学がにじみ出ていた。

「土地の風土と、人の手。その両方を感じながら、葛を味わってもらえたら嬉しいです」


茶房 葛味庵で味わう、できたての葛餅という体験

本格的な手作り葛もちが味わえる

本格的な手作り葛もちが味わえる

森野吉野葛本舗が営む実店舗「茶房 葛味庵」では、吉野葛の魅力を“味わう体験”として実感できる。店内で供される葛餅は、一般的に想像される弾力の強いものとは異なり、箸を入れた瞬間にふるりと揺れ、口に運ぶとすっとほどけるような繊細さが印象的だ。透明感の奥にわずかに白く霞むその佇まいは、森野氏が語る「障子やすりガラスのような奥ゆかしさ」を体現しているかのよう。添えられたきな粉や黒蜜はあくまで脇役で、主役はあくまで葛そのものの風味と舌触り。長い時間をかけてさらされた葛だけが持つ、なめらかさと余韻のある味わいを、目の前で味わえる場所がこの茶房だ。商品としての葛粉だけでなく、「なぜ450年続いてきたのか」を五感で理解できる空間でもある。

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