人との縁から始まった、大工の道
自らが建てた『檜牧ベース』室内にて
株式会社橋本工務店の代表・橋本恵至氏がこの道に入ったきっかけは、ごく自然な流れだったといいます。
父親が大工であり、もともとは長男が家業を継ぐ予定でしたが、その選択が変わったことで、次男である橋本氏が跡を継ぐことになりました。
「スーツを着てネクタイを巻くような仕事には、どうしても興味が持てなくて。実際にやってみたら、この仕事が一番楽しかったんです」
幼い頃から身近にあった大工の仕事。やってみて初めて、自分の性に合っていると実感したといいます。
「見えなくなるまで」の仕事に、どこまで向き合えるか
橋本工務店のこだわりを語る橋本氏
橋本工務店が家づくりで何より大切にしているのは、「見えなくなる部分」へのこだわりです。
断熱、耐震、耐風、構造――完成後には壁や床に隠れてしまう工程こそ、家の寿命と住み心地を左右すると考えています。
「最近は家を“包み込む”工法が主流です。その包み込むまでの工程が一番大事なんです」
同社では、すべての住宅を長期優良住宅認定で建築。
耐震等級は全棟で最高等級の3、耐風等級も最高水準を確保しています。
「長く使い、維持管理しながら住み続けてもらう。資産価値を下げない家づくりが前提です」
QOL(生活の質)を高めることが、結果として家族の暮らしを守る――その考え方が、設計から施工まで一貫しています。
家づくりは、完成まで「1年」。土地からなら「2年」
宿泊施設『檜牧ベース』
一棟の家が完成するまでには、新築の場合でおよそ半年。
打ち合わせから完成まで含めると約1年かかるのが一般的です。
しかし、宇陀市ならではの事情もあります。
「相続の問題が、想像以上に多いんです」
名義が何代も前のままになっていたり、所有者が分からなかったりする土地も少なくありません。
その場合、住宅ローンが組めず、家を建てられないケースもあります。
「その調査から一緒にやります。たぶん、そこまで踏み込む工務店は多くないと思います」
専門家と連携しながら、時間をかけて一つずつ課題を解決していく。
だからこそ、土地探しから始めると2年、時には6年かかることもあったといいます。
「まず人間関係の柱を建てる」
人間関係の重要性を語る橋本夫妻
橋本氏が繰り返し口にするのが、「人との関係性」です。
「ただモノを売るだけだと、気持ちが入らない。まずは人間関係の柱を建てることから始めたい」
注文住宅にこだわる理由もそこにあります。
お客様としっかり向き合い、信頼関係を築いた結果、大きなクレームはほとんどありません。
完成した家を前に、感謝の言葉と表情を受け取る瞬間。
それが、この仕事をしていて一番よかったと感じる瞬間だそうです。
宇陀・奈良の木とともにつくる家
実際の建築材をもとにご説明いただく
橋本工務店では、構造材に奈良県産のスギ・ヒノキを使用しています。
土台はヒノキ、柱はスギ。宇陀や吉野の山で育った木材です。
「奈良県産の木は、強いんです」
ヤング係数と呼ばれる指標で見ると、奈良県産材は数値が高く、たわみにくい。
植林の密度が高く、間伐を繰り返しながら時間をかけて育てるため、年輪が詰まった丈夫な木になります。
「成長は遅いけど、その分、強度が出る」
集成材よりも、無垢材。
時間が経つほどに強度が増し、家と一緒に“育つ”素材を選んでいます。
釘を使わない、伝統工法のサウナという挑戦
ふるさと納税返礼品として注目されているのが、釘を使わない伝統工法で組み上げるヒノキのサウナです。
きっかけは、大工体験の中で行っていた伝統工法の組み立てでした。
「この技術を、残したいと思ったんです」
サウナは2〜3人用の屋外設置型。
建蔽率や許可の問題をクリアしやすいサイズ感で設計されています。
施工期間は約30日。
あえて時間をかけ、若手職人に教えながらつくることで、職人育成そのものを返礼品の価値にしています。
「返礼品をもらうだけじゃなく、未来をつくる仕組みにしたかった」
手仕事が残す、100年先の景色
『檜牧ベース』の柱も象徴的な場所にあります
橋本工務店では、今も手ガンナを使った仕上げを大切にしています。
手で削った木は水をはじき、機械では出せない表情を見せます。
「木は生きています。割れてきたほうが、むしろ強くなる」
時間とともに乾き、硬くなり、家を支え続ける。
寺社仏閣が何百年も残る理由は、そこにあると橋本氏は語ります。
職人になりたい方へ
橋本工務店では、伝統工法を次世代につなぐ仲間を求めています。
「手でつくること」「素材と向き合うこと」に魅力を感じる方は、ぜひ一度相談してみてください。