ものづくりは、土木の現場から始まった
植平工業株式会社 植平秀次氏
植平工業株式会社のルーツは、土木建築業にある。
コンクリート二次製品の製造を経て、金属加工へと事業を広げてきた同社。その歩みは、時代の変化と真正面から向き合ってきた歴史でもある。
「公共事業が減っていくなかで、土木製品だけでは売上を維持できなくなってきました」
そう語るのは、代表の植平秀次氏。BtoB中心だった事業構造から、BtoCへ。ネット販売を視野に入れたブランドづくりが始まった背景には、そんな危機感があった。
一方で、祖父の代から受け継いできた“モノづくりの面白さ”を、次の世代へ残したいという思いも大きな原動力だったという。
「普通つくらないもの」を、あえてつくる
返礼品にもなっている鳥居
植平工業の製品ラインナップを見て、まず驚くのが鉄製の鳥居だ。
木製が一般的な鳥居を、なぜ金属でつくるのか。
「鳥居を“自立させる”のは、実はかなり難しいんです。安定計算が要りますから」
過疎化や高齢化が進み、神社を守る氏子の数が減るなか、
「今のうちに、100年、200年もつ鳥居に替えておこう」という声が増えているという。
合祀によって神様を移す際にも、新たな鳥居が必要になる。
そうした現場の“現実的なニーズ”に応える形で、植平工業の鳥居は生まれている。
浮かぶはずのなかったものが、浮いた日
浮桟橋のような巨大なものも造れる工場
もうひとつ象徴的なのが浮桟橋だ。
「鉄屋なので、正直“本当に浮くのか”は不安でした」と植平氏は笑う。
宇陀で製作し、トラックで運び、現地で設置。
実際に水に浮かんだ瞬間は、強く印象に残っているという。
現在では、万博関連の国際ヨットレースや地域開発の碇泊所など、
公共性の高い案件にも数多く採用されている。
安全性を“書面で証明する”時代においても、同社の技術力は信頼を得ている。
実用性から生まれた、無骨な美しさ
思いついたらすぐにアイデアをメモしておくことが秘訣
植平工業のデザイン哲学は、一貫している。
「かっこよさ」よりも、「本当に必要かどうか」。
潜在的なニーズを読み取り、不要な機能は削ぎ落とす。
その結果生まれる無骨さを、「それがいい」と評価する顧客も多い。
ステンレスやアルミといった素材選びも、
“長く使えるか”“10年後も使っているか”という視点が基準だ。
「あなたに出会えてよかった」のために
植平工業を訪れると目に入る社訓
同社の経営理念は、
「あなたに出会えてよかった」。
その“あなた”は、顧客だけではない。
取引先、社員、地域の人々――関わるすべての存在を指している。
「最後に『植平さんに頼んでよかった』と言ってもらえるかどうか。そこがすべてです」
高額なふるさと納税返礼品も、話題づくりだけが目的ではない。
宇陀市に、こんな技術を持つ会社があることを知ってもらう。
そこから地域に人が訪れるきっかけになれば――そんな思いが込められている。
地域とつながり、次の100年へ
社会の「悩み」を解決するクリエイティブな企業
近年は、地域の事業者と連携した返礼品づくりにも力を入れている。
金属加工だけでは完結しない課題を、庭師や職人と“チーム”で解決していく発想だ。
「返礼品を通じて、地域の中に新しいコミュニティが生まれていく。
そんな形の活性化もあると思うんです」
実用性を起点に、人と地域をつないでいく。
植平工業のものづくりは、今日も静かに、しかし確かに広がっている。